私たちの身体の不思議私たちの身体の不思議

私たちが生まれるまで 3)着床

次に受精から着床(子宮の壁に到達し、そこで胚として育つ)について話を進めます。

1.受精のメカニズム

受精のメカニズムはまだ解らないことが多いのです。
特に卵子内に入る精子がなぜ1個しか許されないのか、?
最近、国立成育医療センター生殖医療研究部宮戸室長が大変興味深い論文を発表しました。
専門的な文献ですが、大変注目されている研究なのでお読み下さい。

The fusing ability of sperm is bestowed by CD9-containing vesicles released from eggs in mice.

2.受精卵

さて、ヒトの受精ですが健康の男子であれば1ccの精液の中に1億個の精子が含まれています。通常の射精では3ccの精液がでますので、3億個の内、原則として1個だけが受精に与ることになります。
どのように選ばれるのか、或いは偶然か、まさに生命の神秘です。

図1 受精

図1はマウスの受精、受精卵の卵割の模様を走査電子顕微鏡で観察した図です
このように,受精卵は卵割(細胞分裂)を繰り返しながら卵管を子宮の方へ遡及していきます。

3.着床へ

受精後6日後に胚盤胞という時期になると子宮の壁(子宮内膜)にどんどん進入して着床します(図2)。

図2 着床

 

因みに胚盤胞(blastocyst)とは着床前(受精後5-6日)の胚で内細胞塊(inner cell mass、将来胎児になる部分)があり、その外側を卵黄嚢(yolk sac)と栄養膜が囲む,構造をいいます。
内細胞塊は100個程度の細胞からなり、われわれの体の全ての細胞に分化する能力があります。再生医療で用いられようとしている胚性幹細胞(ES細胞)は内細胞塊を培養して得られます。

卵黄嚢は鶏卵の黄身に当たる部分で内細胞塊を栄養します。サカナの卵黄嚢を図4で示します。

図3 着床から胚の成長の模様を示しています。



図4 卵黄嚢 胚(この場合はサカナの胎仔)を栄養する

 

 

★体外受精では受精卵を胚盤胞まで試験管内育て子宮内に移植します。

4.胚盤胞の内細胞塊の発達から胚葉形成

内細胞塊は次第に成長し、図に示すように内胚葉、外胚葉に分かれ、その間に中胚葉が入り込むように発生してきます。

そして、やがて内胚葉は消化管(胃、小腸、大腸など)、消化器(肝臓、膵臓など)、内分泌臓器などに分化します、外胚葉は神経組織(脳、脊髄、眼球など)、皮膚へ、また中胚葉は体の支柱となる骨や軟骨、筋肉、血管、結合組織になります。
その有様は図5に示してあります。

図5 胚葉形成

5.胚葉形成

受精から胚葉形成までをまとめたものが図6です。

図6 受精から器官形成まで
赤:内胚葉、青:中胚葉、黒:外胚葉をそれぞれ示しています

各臓器の詳しい発生・成熟の模様は別に述べます。