私たちの身体の不思議

私たちが生まれるまで 1)性周期

図1

性周期は脳下垂体ホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン)、卵巣ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)などの影響によって卵胞期、排卵、黄体期、月経期のサイクルを繰り返します
その間子宮内膜の組織変化が起こり、黄体期を迎えた内膜(分泌期内膜)に受精卵が着床します。そこで妊娠が成立するのです。

図1の説明
(1)卵胞期:まず大脳の底部付近にある視床下部から性腺刺激ホルモンの放出を促すホルモン(GnRH)の分泌が増加し、この刺激により下垂体から卵胞刺激ホルモン
(FSH)の分泌が始まります。すると左右どちらかの卵巣で1個の卵胞が発育し、成熟にともない卵胞から卵胞ホルモン(FH)の分泌が増加します。この卵胞ホルモンによって、子宮内膜は増殖し、厚くなります
(2)排卵期:卵胞ホルモン量がピークに達すると、下垂体から黄体化ホルモン(LH)が一時的に大量に放出され、卵子が卵胞から腹腔へ放出されます。これを排卵と呼んでいます
(3)黄体期:排卵を終えた卵胞は黄体に変化し、ここから黄体ホルモンが分泌され、この黄体ホルモンの作用により、子宮内膜から栄養を含んだ粘液が分泌され、受精卵の着床に適した状態となります

つまり、月経が開始するとそれが終わるまで(閉経)、必ず(通常では)28日に1回は着床準備状態(受精→着床)になるのです

(4)月経期:着床が起こらず、排卵後約2週間過ぎると、黄体は次第に小さくなり白体となり、やがて 消失します。
それと同時に、卵胞ホルモン、黄体ホルモンが減少し、厚くなっていた子宮内膜の表面がはがれ落ち、出血します(月経)

★生殖に関わる女性の体のダイナミズム
生殖に関して、女性と男性の役割は生物学的に決定的に違います。
もちろん、生殖の始まりは女性と男性が交接することから始まります。
しかし、男性は女性に精子を送り込んだら、生殖学的には全く用なし!
自明のことですが、精子を受けた卵子(受精卵)→胚→胎児を育むのは専ら女性ですね。
女性が生殖に対していかに用意周到に、しなやかにそしてダイナミックに自分の体を変えていくさまは、まさに生物の生物たる所以です。
つまり、子孫を育むという最も基本的なメカニズムが機能します。

そのあたりを説明したいともいます。

「性周期」は

i) 女性として性周期(既述、図1)
ii) おなかに子を宿す母として
iii) 赤ちゃんをお乳で育む母として

の3段階があり、その瞬間・瞬間で劇的に変化します。

これはまさに「生命の神秘」です

ii) 胎児を宿す母として 受精した卵は卵管を遡って(遡及)して子宮内膜(子宮体部)に着床すると妊娠が成立します。

妊娠が成立した途端、下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンの分泌が低下し、卵巣では黄体ホルモン相が持続し、エストロゲン、プロゲステロンが分泌されます。
そうすると分泌期子宮内膜は脱落膜に変化します
さらに、胎盤が形成されるヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)がでて、卵巣からのエストロゲン、プロゲステロンとが相まって下垂体からの性腺刺激ホルモンを益々抑制するよう作用します。また、同様の機序で下垂体から出る乳汁分泌ホルモンが抑制されます。このようなプロセスで妊娠が継続します

iii) 分娩後、赤ちゃんを育む母として

図3

分娩後女性のホルモンはまた、図4のように劇的に変化します。
分娩後、直ちに卵巣からのエストロゲン分泌が低下し、下垂体からの乳汁刺激ホルモン(PRL)の分泌の抑制がとれます。PRLが血中に上昇すると母親の乳房から乳汁の分泌が始まります。
まさに、分娩の瞬間から、このようなホルモンの劇的な変化が起きるのです。

そして、授乳が終わる頃になると、やがて、女性としての性周期がまた始まります。
その際、お乳を与えているとその周期の開始が遅くなります。